「一般社団法人の理事は何名から設置できるのか」「監事は必ず置く必要があるのか、置くとしたらどのような役割を担うのか」「非営利型の親族要件を満たす役員構成をどう設計すればよいのか」——一般社団法人の設立を進める経営者から、役員選任に関する具体的な質問が頻繁に寄せられます。理事と監事の選任は、法人運営の基盤となる重要な手続きであり、非営利型の要件維持や相続税対策の効果にも直接影響します。本記事では、理事・監事の選任を、両者の役割の違い・最低人数と機関設計・任期と再任・親族要件・選任手続き・役員報酬と利益相反取引・戦略的視点という7つの軸で深掘り解説します。年商1,000万〜3億円規模の経営者が、長期的な視点で最適な役員体制を構築できる内容として、実務専門家の監修のもとで整理しました。
1. 結論:理事1名以上、非営利型なら親族要件の遵守が必須

| 項目 | 基本ルール | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| 理事 | 1名以上が必須。理事会設置なら3名以上 | 中小規模では理事3〜5名が標準 |
| 監事 | 原則任意。理事会設置法人では必須 | 透明性や相続税対策の観点で任意設置も検討 |
| 非営利型 | 各理事の親族等が理事総数の3分の1を超えないこと | 設立時だけでなく運営中も継続維持が必要 |
| 戦略判断 | 役員構成が運営と税務に影響する | 非同族役員を早めに確保する |
- 向いている〇:非同族役員を含め、実態ある関与を前提に役員体制を組める構成
- 向いていない×:親族だけで固めた構成、形式的な役員だけで要件を満たそうとする構成
1-1. 理事は法人の業務執行を担う
一般社団法人法は、理事1名以上の設置を必須としています。理事会を設置する場合は3名以上が必要となります。理事は、法人の業務執行を担当する役員であり、代表理事は法人を対外的に代表する存在となります。中小規模の協会ビジネスでは、理事3〜5名で構成するパターンが標準的です。
理事は、社員総会で選任され、定款・社員総会の決議・理事会の決議などに従って業務を執行します。法人の運営方針の決定、契約の締結、財産の管理、職員の指揮監督など、法人運営の中核となる役割を担います。理事選定は、法人の運営の質を直接決定する重要な意思決定です。
1-2. 監事は任意設置だが、重要な監督機能を担う
監事は、原則として任意設置ですが、理事会設置一般社団法人と会計監査人設置一般社団法人では必須となります。監事は、理事の業務執行および会計を監査する役員であり、法人運営の透明性と健全性を担保する重要な役割を担います。
年商1〜3億円規模の中小規模法人で理事会を設置しないケースでは、監事の設置は任意です。ただし、長期的な運営の透明性確保、対外的な信用構築、相続税対策効果(役員総数を増やすことで「特定の一般社団法人等」課税の影響を相対化できる効果)の観点で、監事を任意に設置するメリットもあります。
1-3. 非営利型の親族要件が最重要
非営利型一般社団法人の役員選任で最も重要なのが、親族要件の遵守です。「各理事について、その理事と親族関係にある理事の合計が理事総数の3分の1を超えないこと」という要件を満たす必要があります。これは設立時だけでなく、運営中も継続的に維持しなければなりません。
親族要件を満たさない役員構成では、非営利型として認定されないか、運営中に要件違反となって普通法人化のリスクが生じます。設立時から長期的な視点で、親族要件を満たす役員構成を計画的に設計することが、節税スキームの基盤を確実にする前提となります。
2. 理事と監事の役割の違い
| 区分 | 主な役割 | 兼任可否・注意点 |
|---|---|---|
| 理事 | 法人の業務執行を担当する | 代表理事や業務執行理事として運営を担う |
| 監事 | 理事の業務執行と会計を監査する | 理事との兼任はできない |
| 代表理事 | 法人を対外的に代表する | 契約、訴訟、銀行口座開設などで代表権を行使する |
| 業務執行理事 | 代表理事以外で業務執行を担当する | 中小規模では設けないケースも多い |
2-1. 理事は業務執行担当
理事は、法人の業務執行を担当する役員です。具体的な役割として、法人の運営方針の策定、契約の締結、財産の管理、職員の指揮監督、対外的な法人代表(代表理事の場合)などが挙げられます。理事会設置法人の場合、理事は理事会のメンバーとして、法人の重要な意思決定に参加します。
理事会非設置法人の場合、各理事が単独で法人の業務執行権を持ちます。代表理事を別途定めることも、定款や社員総会の決議で可能です。法人の規模と運営方針に応じて、代表理事を1名置くか、複数の業務執行理事を置くかなどを設計します。
2-2. 監事は監査担当
監事は、理事の業務執行と会計を監査する役員です。具体的な役割として、理事会への出席(理事会設置法人の場合)、計算書類の監査、業務の適法性確認、社員総会への監査報告などが挙げられます。法人運営の透明性と健全性を担保する第三者的な立場の役員です。
監事は、理事と兼任することはできません。法人運営の業務執行(理事)と、その業務執行の監査(監事)を分離することで、ガバナンスの透明性を確保する仕組みです。監事を設置する場合は、必ず理事とは別の人物を選任する必要があります。
2-3. 代表理事と業務執行理事
代表理事は、法人を対外的に代表する権限を持つ理事です。法人を当事者とする契約の締結、訴訟における法人代表、銀行口座開設などにおいて、法人を代表する権限を行使します。代表理事は、定款の定め、定款の定めに基づく社員総会の決議、理事会設置法人の場合は理事会の決議で選定されます。
業務執行理事は、代表理事以外で、法人の業務執行を担当する理事を指します。理事会設置法人で、代表理事の業務執行を補佐する役割を担います。中小規模法人では、代表理事のみで業務執行を完結できる場合が多く、業務執行理事を別途設けないケースが標準的です。
3. 最低人数と機関設計
| 機関設計 | 最低人数 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 理事会非設置法人 | 理事1名以上。監事は任意 | 小規模で機動的に運営したい場合 |
| 理事会設置法人 | 理事3名以上+監事1名以上 | 透明性や複数人での意思決定を重視する場合 |
| 非営利徹底型① | 実質的に理事3名以上が必要 | 非営利型の税務メリットを確実に取りたい場合 |
3-1. 理事会非設置法人の場合
理事会を設置しない一般社団法人の場合、理事は1名以上で足ります。最小構成として、代表理事1名のみの設計も法律上は可能です。中小規模の協会ビジネスや、創業者個人がほぼすべての業務執行を担う構造の場合、シンプルな設計として選ばれることがあります。
ただし、理事1名のみの構成は、運営の継続性、相続税対策効果(「特定の一般社団法人等」課税の判定)、対外的な信用構築などの観点で、複数の限界があります。実務上は、理事3〜5名で構成するパターンが標準的に採用されています。
3-2. 理事会設置法人の場合
理事会を設置する一般社団法人の場合、理事3名以上+監事1名以上が必須となります。理事会設置法人では、理事会が業務執行の意思決定機関となり、定款・社員総会の決議・理事会の決議に従って業務が執行されます。理事会の運営の透明性と健全性を担保するため、監事の設置も必須となる仕組みです。
理事会設置は、法人の規模が大きい場合、複数の業務執行理事が必要な場合、対外的な透明性を高めたい場合などに選択されます。中小規模の協会ビジネスでも、相続税対策効果の最大化や、長期的な事業承継の視野を入れる場合、理事会設置を選ぶケースが増えています。
3-3. 非営利徹底型①は実質的に理事3名以上
非営利徹底型①の要件として、「各理事について、その理事と親族関係にある理事の合計が理事総数の3分の1を超えないこと」が求められます。この要件を実質的に満たすには、理事3名以上が必要です。理事2名で構成すると、どちらかが他方の親族なら、その理事は「自分+親族1名=2名」となり理事総数2名の3分の1(0.67名)を超えるため要件違反となります。
したがって、非営利徹底型①を選択する場合は、設立時から理事3名以上の構成を計画する必要があります。理事3名のうち、創業者本人+家族1名+非同族1名、または創業者本人+非同族2名といった構成が、要件を確実に満たすパターンとなります。
4. 任期と再任のルール
| 役職 | 任期の目安 | 改選時の手続き |
|---|---|---|
| 理事 | 2年以内 | 定時社員総会で改選し、再任も可能 |
| 監事 | 4年以内 | 独立性と継続性を重視して長めに設定される |
| 変更登記 | 役員変更から2週間以内 | 就任承諾書や社員総会議事録を添付する |
4-1. 理事の任期は2年以内
理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までと、一般社団法人法で定められています。実務上は、定款で「理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする」と定めるのが標準的です。
任期満了時には、社員総会で改選決議を行います。再任は可能で、現任の理事をそのまま再任することも、新たな理事に交代することもできます。重要な人事である役員の交代を、定期的に社員総会で確認する仕組みとして機能しています。
4-2. 監事の任期は4年以内
監事の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までです。理事の任期2年と比較して長く設定されているのは、監事の独立性と継続性を確保するためです。監督機能を担う監事は、頻繁に交代するよりも長期的に同じ視点で監査を継続するほうが、機能の安定性が高まります。
実務上、理事の任期2年・監事の任期4年の組み合わせが標準的です。理事の改選を2年ごとに行い、監事は4年ごとの改選とすることで、運営の継続性と適切な人事の見直しの両立を実現できます。
4-3. 任期満了時の改選手続き
任期満了時の改選は、定時社員総会で行われます。理事・監事の選任は社員総会の普通決議事項で、出席した社員の議決権の過半数で決議されます。社員総会の招集通知に、改選議案を含めることで、改選決議を実施します。
改選決議後、新任の理事・監事の就任承諾書を取得し、法務局への変更登記を行います。変更登記は、就任後2週間以内に申請する必要があり、登録免許税は1件3万円(資本金1億円以下の場合)です。任期管理と登記期限の管理を、法人運営の年次フローとして組み込むことが重要です。
5. 非営利型の親族要件
| 構成例 | 親族要件の見方 | 判断 |
|---|---|---|
| 理事3名=創業者+非同族2名 | 親族関係がないためクリアしやすい | 最もシンプルで安全 |
| 理事4名=創業者+家族1名+非同族2名 | 家族を入れつつ非同族も確保する | 実務上使いやすい |
| 理事5名=創業者+家族2名+非同族3名 | 家族を増やす分、非同族役員も増やす | 長期承継を見据える場合に検討 |
| 理事2名=創業者+家族1名 | 3分の1要件を満たしにくい | 非営利型では避けるべき |
5-1. 親族要件の正確な定義
非営利型の親族要件は、法人税法施行令第3条が定めるもので、「各理事について、その理事と親族等(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族など)の合計が理事総数の3分の1を超えないこと」という内容です。「親族等」の範囲は広く、配偶者、子、孫、兄弟姉妹、両親、祖父母、伯叔父母、甥姪、配偶者の親族など、ほぼすべての血族・姻族が含まれます。
「3分の1を超えない」という基準は、ある理事について自分自身と親族等の合計が、理事総数の3分の1以下である必要があるという意味です。理事3名のうち1名のみが親族関係(例:本人+自分の親族1名)なら、各理事について「自分+親族1名=2名」が3分の1(1名)を超えるため要件違反となります。
5-2. 要件を満たす役員構成のパターン
親族要件を確実に満たす役員構成のパターンは、いくつかあります。第一に「理事3名=創業者+非同族2名」——最もシンプルで確実なパターン。家族を理事に入れないことで親族要件を完全にクリアできます。第二に「理事4名=創業者+配偶者or子1名+非同族2名」——家族を一部入れつつ要件をクリアするパターン。
第三に「理事5名=創業者+家族2名+非同族3名」——家族を多く入れたい場合、非同族役員も同数以上配置することで要件をクリアするパターン。役員総数が増えるほど、親族役員を増やせる余地が広がりますが、非同族役員も増やす必要があります。これらを踏まえた長期的な視点での構成設計が重要です。
5-3. 「特定の一般社団法人等」課税との関係
非営利型の親族要件と、2018年税制改正で導入された「特定の一般社団法人等」課税の判定基準は、別の制度です。非営利型の親族要件は「3分の1を超えない」という基準ですが、「特定」の判定は「同族役員が役員総数の過半数を占めていないか」という基準です。
両者を統合的に考えると、非営利型の親族要件(理事の親族3分の1以下)を満たしているなら、自動的に「特定」の判定基準(同族役員の過半数超過)も満たさないことになります。設立時から非営利型の親族要件を確実にクリアする役員構成にすることで、相続税対策効果も同時に実現できる構造です。
6. 役員の選任・解任の手続き
| 場面 | 手続き | 注意点 |
|---|---|---|
| 設立時の選任 | 定款または設立時社員の決議で選任する | 就任承諾書を取得し設立登記で登記する |
| 運営中の選任 | 社員総会の普通決議で選任する | 新任役員の就任承諾書が必要 |
| 解任 | 社員総会の普通決議で解任できる | 正当な理由がない場合は損害賠償リスクに注意 |
| 変更登記 | 変更後2週間以内に申請する | 期限超過は過料の対象になり得る |
6-1. 設立時の役員選任
設立時の役員選任は、定款の定めまたは設立時社員の決議で行われます。定款で設立時の役員を直接定めるパターンと、定款には記載せず設立時社員の決議で選任するパターンがあります。実務上は、定款に設立時の役員を記載するパターンが標準的です。
選任された役員は、就任承諾書を提出し、法務局への設立登記時に役員として登記されます。設立後の最初の任期は、選任時から計算されます。設立時の役員構成が、その後の運営の出発点となるため、慎重な選定と承諾の確認が必要です。
6-2. 運営中の役員選任・解任
運営中の役員選任・解任は、社員総会の普通決議で行われます。出席した社員の議決権の過半数で決議され、選任・解任が確定します。選任の場合、新任役員の就任承諾書を取得し、法務局への変更登記を行います。
解任の場合、社員総会の決議をもって役員を解任することができます。ただし、正当な理由なく解任された場合、役員から法人に対して損害賠償請求の権利が生じる可能性があります。役員の解任は、慎重な判断と適切な手続きを踏むことが重要です。
6-3. 変更登記の期限
役員の選任・解任・退任・任期満了による交代があった場合、法務局への変更登記が必要です。変更登記の期限は、変更が生じてから2週間以内です。期限を過ぎると、過料(行政罰)の対象となる可能性があります。
変更登記には、登録免許税1件3万円(資本金1億円以下の場合)と、必要書類(就任承諾書、社員総会の議事録、印鑑証明書など)が必要です。役員変更が頻繁にある場合、変更登記の費用と手続きの負担も無視できないため、計画的な役員人事が重要です。
7. 役員報酬と利益相反取引
| 論点 | 基本ルール | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 役員報酬 | 定款または社員総会の決議で定める | 法人税上は定期同額給与などの要件に注意 |
| 利益相反取引 | 社員総会または理事会の承認が必要 | 事前承認と議事録記録を徹底する |
| 役員責任 | 善管注意義務と忠実義務を負う | 違反すると損害賠償責任が生じる可能性がある |
7-1. 役員報酬の決定方法
理事・監事の報酬は、定款の定めまたは社員総会の決議で定められます。実務上は、定款で「理事及び監事の報酬は、社員総会の決議で定める」と定め、社員総会で報酬総額の枠を決議するパターンが標準的です。総額枠を社員総会で決議した上で、各役員への配分は理事会または代表理事が決定します。
法人税法上の役員報酬は、「定期同額給与」または「事前確定届出給与」の要件を満たさないと損金算入できません。定期同額給与なら毎月同額を支給、事前確定届出給与なら株主総会または社員総会の決議から1ヶ月以内に税務署に届出した金額・支給日のとおりに支給する必要があります。
7-2. 利益相反取引の制限
一般社団法人法第84条は、理事と法人の間の利益相反取引について、社員総会または理事会の承認を必要とすると定めています。具体的には、理事が自分の名義で法人と取引する場合、理事が代表する他の法人と本法人が取引する場合などが利益相反取引に該当します。
代表的な利益相反取引として、理事個人と法人の金銭貸借、理事個人への業務委託、理事個人への不動産賃貸借、理事が代表を兼ねる他の法人との取引などがあります。これらは事前に社員総会または理事会の承認を得て、議事録に記録する必要があります。手続きを欠いた利益相反取引は、法的に無効となる可能性があります。
7-3. 役員の責任と賠償
理事・監事は、法人に対して「善管注意義務」(一般社団法人法第64条等)と「忠実義務」を負います。これらの義務に違反して法人に損害を与えた場合、損害賠償責任を負うことになります。
善管注意義務とは、「善良な管理者の注意」をもって職務を遂行する義務であり、その人物の地位・能力に応じた合理的な注意を払うことが求められます。忠実義務は、法人の利益のために忠実に職務を遂行する義務です。これらの義務を踏まえた誠実な業務執行が、役員の基本的な責任となります。
8. 役員選定の戦略的視点

| 戦略軸 | 見るポイント | 実務対応 |
|---|---|---|
| 非同族役員候補 | 信頼でき、実態ある関与ができる人か | 専門家・業界関係者・長年の協力者を検討する |
| 監事の任意設置 | 透明性と役員総数の増加に寄与するか | 非同族者を監事にする選択も検討する |
| 長期的な進化 | 後継者育成や創業者引退に対応できるか | 5年・10年単位で役員体制を見直す |
8-1. 非同族役員候補の確保
非営利型の親族要件と相続税対策効果を実現するためには、信頼できる非同族役員候補の確保が極めて重要です。非同族役員候補としては、専門家(税理士・司法書士・行政書士・公認会計士・弁護士)、業界関係者、長年の協力者、信頼できる元同僚、退職した取引先関係者などが選ばれます。
非同族役員には、実際に法人運営に関与してもらうことが必要です。理事会への出席、議事録への署名、定期的な情報共有、適正な役員報酬の受け取りなど、実態を伴った関与が前提条件となります。「形式的な役員」では税務上認められないリスクがあるため、相互に納得できる役員契約を結ぶことが重要です。
8-2. 監事の設置による役員総数の増加
監事を任意で設置することで、役員総数を増やすことができます。役員総数が増えると、「特定の一般社団法人等」課税の計算で純資産を役員数で割った額が小さくなり、相続税課税の影響を相対化できる効果があります。
また、監事を非同族者(専門家、業界関係者など)から選任することで、ガバナンスの透明性も向上します。年商1〜3億円規模の中小規模法人でも、相続税対策効果と長期的な運営の透明性確保の観点で、監事の任意設置を検討する価値があります。
8-3. 長期的な役員体制の進化
役員体制は、設立時に決定した後も、長期的に見直していくべき要素です。事業の成長、後継者の育成、外部関係者との連携拡大、創業者の引退準備など、長期的な事業ライフサイクルの変化に応じて、役員体制も進化させていきます。
設立初期は創業者中心の構成でスタートし、5年後に成人の子を理事に追加、10年後に業界の長年の協力者を理事に追加、15年後に創業者の引退に合わせて後継者を代表理事に登用、といった長期的な視点での役員体制の進化が、法人の持続的な発展を支えます。設立時から長期視点で役員体制を計画することが、長期的な経営の安定性を確保する基盤となります。
まとめ|役員選定は法人運営と相続税対策の両立を支える要
一般社団法人の理事・監事の選任は、法人運営の質と相続税対策効果の両方を決定する重要な意思決定です。理事は法人の業務執行を担当し、監事は理事の業務執行と会計を監査する役割を果たします。理事1名以上(理事会設置法人なら3名以上)が必須で、監事は任意設置(理事会設置法人や会計監査人設置法人では必須)です。理事の任期は2年以内、監事の任期は4年以内が標準で、定期的な改選を通じて運営の透明性が確保されます。
非営利型一般社団法人で最も重要なのが、親族要件の遵守です。「各理事について、その理事と親族関係にある理事の合計が理事総数の3分の1を超えないこと」という要件を、設立時から運営中まで継続的に維持する必要があります。要件違反は普通法人化のリスクを伴い、累積所得への一括課税という大きな打撃を受ける可能性があります。非同族役員(専門家、業界関係者、長年の協力者など)を一定数確保し、実態を伴った関与をしてもらう体制を、設立当初から構築することが重要です。
結論として、年商1,000万〜3億円規模の経営者が一般社団法人を設立する際、役員選定は法人運営の根幹と相続税対策の両方を支える戦略的な意思決定です。非同族役員候補の確保、適正な役員報酬の設計、利益相反取引の適切な処理、長期的な役員体制の進化計画など、複数の論点を統合的に検討する必要があります。設立時の役員構成が、その後の数年〜十数年の法人運営の質と税務上の安定性を大きく規定するため、専門家との緻密な連携を前提に、自社の長期戦略に最適化された役員体制を構築することが、長期的な経営の安定と成長を支える基盤となります。

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